■戻る■ 下へ 次へ
女店主「好きだよ、女ちゃん」女「私もです」
1 名前: ◆nRrk0j/cII [saga] 投稿日:2017/02/23(木) 23:23:29.99 ID:aTGEe0sw0
百合です。苦手な方はお控えください。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1487859809


2 名前: ◆nRrk0j/cII [saga] 投稿日:2017/02/23(木) 23:25:29.35 ID:aTGEe0swo


好きであっても叶わない。

好きであっても許されない。

叶わない恋と許されない恋。

より意地悪なのはどっちだろう?



3 名前: ◆nRrk0j/cII [saga] 投稿日:2017/02/23(木) 23:26:43.73 ID:aTGEe0swo


カランコロン。

ベルの良い音が鳴る。

たまに行くお気に入りの古書店だ。


女店主「いらっしゃーい」


見慣れない女性。

若くて美人…。

誰だろう?


女「あの…先月までの店主さんって…」

女店主「ああ、おじいさん?」

女「はい…どうしたのかなって…」

女店主「もう歳だからって店を私に譲って隠居したよ?」

女「そうだったんですね…」

女店主「おじいさんに用事?」

女「あ、いえ、そういうわけではなくて…たまにここに来てオススメの本なんかを教えてもらったり雑談をしてたので…」

女店主「もしかして女さん?」

女「そうですけど…」

女店主「ああ良かった、おじいさんから預かりものがあってね、はい」


一冊の本だ。

なんだろう…?



4 名前: ◆nRrk0j/cII [saga] 投稿日:2017/02/23(木) 23:27:13.58 ID:aTGEe0swo


女「あの、これ…」

女店主「渡してって言われたの」

女「そうなんですか、ありがとうございます。さっきからおじいさんって言ってますけど…」

女店主「あ、私あの人の孫なの。女店主って言うんだ。よろしくね」

女「そうなんですか…よろしくお願いします」


受け取った本をカバンにしまってから店内の本を眺める。

古書店の雰囲気って独特で好きだ。

眺めながら気になった本を何冊か選ぶ。

女店主さんはオススメの本とかあるんだろうか。



5 名前: ◆nRrk0j/cII [saga] 投稿日:2017/02/23(木) 23:29:20.19 ID:aTGEe0swo


女「これ…お願いします」

女店主「はい……1200円になります…ちょうどお預かりいたします」

女「あの…」

女店主「ん?」

女「レジの時は敬語になるんですね?」

女店主「そりゃまあ…一応接客業…ですから」

女「あはは、面白いです」

女店主「そうかな」

女「そうですよ。あ、女店主さんって本読みますか?」

女店主「私はそんなに読まないかな。話題になったので気になったのをちょこっと、それと有名なやつぐらいかな」

女「有名なやつって?」

女店主「走れメロスとか蜘蛛の糸辺りかなぁ」

女「国語の教科書に載ってるやつじゃないですか…」

女店主「あ、バレた?女ちゃんのおすすめの本とかある?」

女「そうですね…この前読んだ……」


何冊かおすすめの本を紹介して

軽く世間話をした。



6 名前: ◆nRrk0j/cII [saga] 投稿日:2017/02/23(木) 23:29:51.93 ID:aTGEe0swo


女「それじゃ…」

女店主「ありがとうございました。また来てね?」

女「ぜひ」


ドアのベルが気持ち良い音を奏でた。

女店主さんのオススメの本はなかったけど

楽しかったなぁ…。

なぜか最後に言われた

「また来てね」

という台詞が心になんとなく残っていた。



7 名前: ◆nRrk0j/cII [saga] 投稿日:2017/02/23(木) 23:30:24.66 ID:aTGEe0swo


家に帰ってさっき受け取った本を確認する。


女「あ…私が読んでみたいって言ってたやつだ…お金払いに行かないと」

女「ん、手紙…?」


それは前の店主さんからだった。

要約すると

・読みたがってた本が見つかったからプレゼントするよ

・今まで話し相手になってくれてありがとう

・女店主をよろしく

といったものだった。


女「はぁ…良い人だったなぁ…」

女「明日お礼言いに行こう…」


店に行く口実ができたこと、

また女店主さんに会えること、

そんなことを考えたら何だか嬉しくなってきて

軽い気分でベッドに入った。



8 名前: ◆nRrk0j/cII [saga] 投稿日:2017/02/23(木) 23:30:52.18 ID:aTGEe0swo


女「よし…!」

なぜか店の前で気合いを入れてドアを引く。

カランコロン、といつものベル。


女店主「おーいらっしゃい」

女「どうも…」


なんて素敵な笑顔なんだろう。

まて、これじゃ恋をしてるみたいじゃないか、私。

女同士なんて…。



9 名前: ◆nRrk0j/cII [saga] 投稿日:2017/02/23(木) 23:31:20.83 ID:aTGEe0swo


女「昨日、本を頂いたじゃないですか」

女店主「うん、なんかあったの?」

女「あれの代金払わないとなって思って…」

女店主「おじいさんからの個人的なプレゼントらしいけど?」

女「そうみたいですけど…やっぱりモヤってするなあって」

女店主「まあ良いんじゃない?ありがたく貰ってくれた方がきっとおじいさんも喜ぶと思うよ」

女「そうですか…うん、ありがとうございます。あとおじいさんに伝言お願いできますか?」

女店主「なんて?」

女「お手紙ありがとうございました、本もとても面白かったです、って」

女店主「うん分かった」

女「よろしくお願いします」


伝言をお願いできた、良かった。

でもこのまま帰るのもな…

そう思って店内を見ようとした私に最高の声がかかった。



10 名前: ◆nRrk0j/cII [saga] 投稿日:2017/02/23(木) 23:31:47.94 ID:aTGEe0swo


女店主「あ、女ちゃんさ」

女「はい?」

女店主「良かったらお茶しない?お客さん来なくてさ」

女「私は客じゃないんですか?」

女店主「ごめんごめん、なんていうかお客さんってより友だちって感じがしちゃって」

女「あはは、その方が嬉しいです。いただきます」

女店主「良かった。紅茶でいい?」

女「私、紅茶大好きなんです」

女店主「わあ嬉しい。淹れるから少し待ってて」

女「手伝いますか?」

女店主「大丈夫、ありがとね」


なぜそんなに嬉しそうにするのだろう。

そんなに喜ばれたら

私まで辛くなってしまう。

私まで…?

まで…?

一体どこからそんな接続詞が飛んできたのだろう?

願望かな。

そんなことを考えていると紅茶のいい香りがしてきた。



11 名前: ◆nRrk0j/cII [saga] 投稿日:2017/02/23(木) 23:32:15.22 ID:aTGEe0swo


女店主「はいったよー」

女「ありがとうございます。いい香りですね」


店のカウンターの中に招かれる。


女店主「はい、アールグレイだよ」

女「普段から飲むんですか?」

女店主「よく飲むのはこれかな」

女「私もなんです」

女店主「趣味が合うね、なんか嬉しいよ」


あれ、やっぱり恋をしてるんじゃないか。

そんな気がしてきた。

私は良くても女店主さんはどう思うだろう。

そう考えるとこの気持ちは心の奥底にしまうしかなかった。



12 名前: ◆nRrk0j/cII [saga] 投稿日:2017/02/23(木) 23:32:53.18 ID:aTGEe0swo


女「はぁ…落ち着きますね」

女店主「ねー。あ、そういえばお菓子買ってあるんだった。食べる?」

女「良いんですか?」

女店主「女ちゃんと食べようと思って」

女「えへへ、嬉しいです」


この人は天然なんだろうか。

それとも…いや、都合のいい妄想は止めよう。

期待したって傷つくだけだし

だったら期待なんてしないで

このまま仲良しでいた方がよっぽど幸せだ。



13 名前: ◆nRrk0j/cII [saga] 投稿日:2017/02/23(木) 23:33:20.42 ID:aTGEe0swo


女「わぁ…美味しいですねこれ」

女店主「ほんと?お口に合ってよかったよ」

女「これどこのですか?」

女店主「ウチの裏のやつ。そこの」

女「へぇ…気になってたんですよ、今度行ってみよ」

女店主「一緒に行く?」

女「いいんですか?」

女店主「お休みの日ならいつでも」

女「じゃあ明後日の日曜日とかどうですか?」

女店主「良いよ、11時にここに集合しよっか」


驚くほど自然な流れだった。

なんという幸運だろう。

これはもはやデートではないか。

舞い上がる気持ちを抑えて平静を装うのに

全力を尽くさなくてはならなかった。



14 名前: ◆nRrk0j/cII [saga] 投稿日:2017/02/23(木) 23:33:57.28 ID:aTGEe0swo


女「ごちそうさまでした。本当に美味しかったです」

女店主「あはは、大げさだなぁ。下げてきちゃうね?」

女「あ、手伝います」

女店主「いいよいいよ、それにお店に誰もいないのも良くなさそうだから少し見ててくれない?」

女「そうですね…わかりました」



15 名前: ◆nRrk0j/cII [saga] 投稿日:2017/02/23(木) 23:34:32.04 ID:aTGEe0swo


女店主「はぁ……女ちゃん…」

女店主「あはは…まさかこんなに仲良くなれるなんてなぁ…どうしよう……つらいや…」


女店主「お待たせー。遅くなっちゃってごめんね?」

女「そうでもないですよ?気にしないでください」

女店主「そっか、ありがと」


沈黙。

なんだろう、女店主さんの雰囲気が重い。


女「どうかしましたか?」

女店主「えっ?なんか変だった?」

女「なんとなく、普段より暗いなぁって気がして…」

女店主「そうかなぁ…疲れが出たのかも」

女「大丈夫ですか?」

女店主「うん、大丈夫だよ」

女「そう…ですか……」


言ってくれても良いのに。

まだそんな関係じゃないってことかな。



16 名前: ◆nRrk0j/cII [saga] 投稿日:2017/02/23(木) 23:35:12.95 ID:aTGEe0swo


女「今日は帰りますね、ごちそうさまでした。ちゃんと休んでくださいよ?」

女店主「嬉しいこと言ってくれるねぇ!」

女「なんかオヤジくさいですよ、それ」

女店主「え、そうかな?」

女「少しですけど…あはは」

女店主「あはは。またおいで」

女「また明日、来ますから。絶対」

女店主「…そんなに意気込まなくて良いよ?」

女「えへへ…それじゃ」

女店主「うん、またね」



17 名前: ◆nRrk0j/cII [saga] 投稿日:2017/02/23(木) 23:35:52.40 ID:aTGEe0swo


店のドアを閉めてカウンターへ向かう。

さっきまで女ちゃんが座っていた椅子に座る。


女店主「はは…まだあったかいや…」

女店主「言えるわけないじゃん…あなたが好きだ、なんて…」


そうだ。女ちゃんにだって彼女自身の人生がある。

私一人のエゴでそれを壊すわけにはいかない。

じゃあどうしてだろう…。

お菓子を買っておいたのは。

一緒に行こうって誘ったのは。

私が気持ちを隠そうとするなら

せいぜい「良い店員さん」ぐらいの関係でいるべきではなかったか。

きっと自分はどこかで彼女に気づかれたい、

その結果がどうであれ気づかれることを求めようとしている。

そうしないと生きていけないぐらいに自身が弱っている。

その事実に気づいてしまった。


女店主「あはは…私って弱いなぁ……」

女店主「女ちゃん、少しだけ許してね?次の日曜日で最後にするから、それまでは……」


溢れそうになった涙を袖で拭った。



18 名前: ◆nRrk0j/cII [saga] 投稿日:2017/02/23(木) 23:36:26.46 ID:aTGEe0swo


女「結局、言ってくれなかったなぁ…。なんだったんだろう」


ベッドに寝っ転がって天井に話しかける。

最近の密かなマイブームだ。


女「私、女店主さんのこと好きなのかな…」

女「うーん…やっぱり好きだなぁ…どうしよ…」

女「女店主さんは言われても困るよねきっと…」


こんな気持ち、伝えられるわけがない。

伝えたって引かれて終わり。

そうなるぐらいなら

いっそ自分の気持ちだって押し殺して

仲良しでいた方が何倍も良い。

この先2度と関われないよりは何倍も。

でも、そんなこと私にできるだろうか。

自分の気持ちを押し殺す。

それはある意味では自分に嘘をつくのと同じだ。

嘘をつきながら仲良くしても

その中身はどれだけ詰まったものになるだろう。



19 名前: ◆nRrk0j/cII [saga] 投稿日:2017/02/23(木) 23:36:54.40 ID:aTGEe0swo


女「嘘、か…」


天井を見つめたまま思考の結果の一部を出力する。


女「やっぱダメだ、うん」


時としてこのプロセスが人生を大きく変える。


女「決めた、日曜日に告白しよう」


そう、今みたいに。




次へ 戻る 上へ