■戻る■ 下へ
妖狐の国の座椅子あふたー
181 名前:SS速報Rがお送りします [saga] 投稿日:2017/05/02(火) 03:47:28.05 ID:BR6G/i8m0
…………………………

シエン「しらこ様、商人の客人でございます」

しらこ「…あー、今日は気が乗らないんだ。お引き取り願いたいな」

シエン「し、しかししらこ様!あの商人には昨日もしらこ様の個人的都合で帰ってもらっています。…お言葉ですが少々勝手が過ぎるかと」

しらこ「うるさいなぁ!シエン!ボクに口答えするのか!?」

シエン「しらこ様がそのような体たらくでは一時の隣街のようにこの街はいずれ終わってしまいますぞ!」


182 名前:SS速報Rがお送りします [saga] 投稿日:2017/05/02(火) 03:48:02.55 ID:BR6G/i8m0
しらこ「そ、そんなこと…分かっている。分かってるけどさ…」

シエン「…男殿でございますか」

しらこ「…お前も分かっているじゃないか」

シエン「無い物ねだりで街を廃れさせてしまっては笑えませぬぞ…」

しらこ「お前も彼と共に修行がしてみたいと嘆いていただろう」

シエン「それはそうでございますが…」


183 名前:SS速報Rがお送りします [saga] 投稿日:2017/05/02(火) 03:48:48.65 ID:BR6G/i8m0
しらこ「シエン!領地主の命令だ!隣街から男殿を連れてこい!」

シエン「無茶振りはやめていただきたい!」

しらこ「無理だと思うなら連れてこなくていいぞ。とにかくボクはもう一度彼の上に座るまでは仕事をしないからな!」

シエン「なっ!?」

隣街商人「あ、あのー…しらこ様はまだ…」

シエン「も、申し訳ない!今しばらくお待ちを!」

シエン「しらこ様!!!」

しらこ「…早く都合を伝えてやったらどうだ。商人殿が可哀想だ」

シエン「ぐぐぐっ…」


184 名前:SS速報Rがお送りします [saga] 投稿日:2017/05/02(火) 03:49:21.69 ID:BR6G/i8m0
………………………………

シエン「…というわけでございます」

男「は、はぁ…」

てんこ「なんだかすごい話だな。旦那様を連れてきたばかりの姫様のようだ」

ある日の昼。
わざわざ隣街からなんと俺への客人だと言うので出迎えてみるとそこには困り果てた顔のシエンさんがいた。


185 名前:SS速報Rがお送りします [saga] 投稿日:2017/05/02(火) 03:49:54.20 ID:BR6G/i8m0
シエン「無論無償でとはぬかさぬ。しらこ様曰く男殿の働き次第で今回は土地の一部の譲渡も検討しているとのこと」

てんこ「と、土地だと!?」

シエン「左様」

男「そんなことして大丈夫なんですか?隣街はわざわざここから買い取った商人を全て無料でこっちに返したばかりじゃないですか」

シエン「このまま廃れていくなら同じ、いやそれ以上でございます」


186 名前:SS速報Rがお送りします [saga] 投稿日:2017/05/02(火) 03:50:29.42 ID:BR6G/i8m0
男「うーん…まぁ一泊二日程度なら俺は良いんだけど…」

てんこさんと目を合わせる。
彼女の顔を見る限り俺と同じ考えのようだ。

てんこ「…姫様がそれをお許しになるかどうか」

男「ちょっと妖狐姫に聞いてくるよ」

てんこ「シエン殿、しばし時間を頂いても?」

シエン「承知」

男「…土地の話もしていいですか?」

シエン「問題ありませぬ」


187 名前:SS速報Rがお送りします [saga] 投稿日:2017/05/02(火) 03:51:12.84 ID:BR6G/i8m0
…………………………

妖狐姫「ふざけておるな!」

妖狐姫の部屋の襖や障子が彼女の怒鳴り声で少し揺れた気さえした。

男(…まぁそうなるよな)

てんこ「…まあ、私も少しばかり同じ意見ではございますが」

男(え…てんこさんも?…なんで?)

てんこ「私は旦那様が行くと仰るなら無理に止めはしません。判断は当人と姫様に全てお任せしますが」

妖狐姫「よりにもよってしらこに座椅子を貸すじゃと!?そのようなことをわらわが許すと思うたのか!」


188 名前:SS速報Rがお送りします [saga] 投稿日:2017/05/02(火) 03:51:54.99 ID:BR6G/i8m0
男「まぁ聞けよ妖狐姫。なんでも俺が少しばかり出かけるだけでちょっとした土地が手に入るらしいぞ」

妖狐姫「関係ないわ!余分な土地なぞいらぬ!」

男(う、うーん…)

実は俺としては少しだけ行きたい気持ちがあった。

勿論ここが嫌になったとか、偶には別の領地の空気が吸いたいだとかではない。

今の俺の生活、ぶっちゃけ言ってしまうとだ。

男(このままじゃあっちの世界でのゴロゴロしてた日々とそんな変わらないんだよな)

まぁ妖狐姫を癒すのが仕事、くぅこを愛で…じゃなくて乗せるのが修行というのならそうでもないのだが…。


189 名前:SS速報Rがお送りします [saga] 投稿日:2017/05/02(火) 03:52:36.85 ID:BR6G/i8m0
とにかくだ。この屋敷に住まう者として一度でいいから妖狐姫たちだけでなく、この街に何かしら貢献したかったのだ。

そんなところにタイムリーに自分の頑張り次第で土地が貰えるという話が転がり込んできたではないか。

ここで俺の才を生かさずして他でどうこの街に貢献しようというのだ。

男「妖狐姫…俺も一度でいいからこの街の力になりたいんだ」


190 名前:SS速報Rがお送りします [saga] 投稿日:2017/05/02(火) 03:53:18.48 ID:BR6G/i8m0
妖狐姫「そのようなことを考えずともうにゅは十分…」

男「お前の日々の頑張りでこの街はあの絶望的に追い込まれていた状況からむしろ今は勢い付いてきている」

男「人が賑わうところには必然的に新しい人がさらに集まる。ここに商店を置きたいっつう商人はますます増えるだろう」

男「そうなるともっと土地が必要になってくる。でも土地なんてそうそう手に入らない。だから今俺を使ってくれ!必ずしらこを満足させてこの街に貢献する!」

てんこ「だ、旦那様…私は感動したぞ!いつの間にそんなにご立派に…」

男「はは…」

てんこさんは布で涙を拭いていた。
もっと早くやる気を出していれば母もこんな顔をしてくれただろうか。


191 名前:SS速報Rがお送りします [saga] 投稿日:2017/05/02(火) 03:54:05.91 ID:BR6G/i8m0
妖狐姫「ならぬ!一度はうにゅを亡き者にしようと企んだ者じゃぞ!?そのような者の本拠地にうにゅを置いておけるか!悪質な質屋に家宝を預けるようなものじゃ!」

くぅこ「そういうことならせっしゃに任せて欲しいでごじゃるよ」

天井裏からくぅこが畳に着地した。

妖狐姫「くぅこ…」

くぅこ「主殿の意思にせっしゃの意思あり。主殿の向かう場所にせっしゃのこの身ありでごじゃる。せっしゃも付いていくでごじゃるよ」


192 名前:SS速報Rがお送りします [saga] 投稿日:2017/05/02(火) 03:54:44.65 ID:BR6G/i8m0
てんこ「くぅこがついてくれるなら安心だな」

男「妖狐姫」

妖狐姫「ぬぅ…」

妖狐姫は少し間を置いてからため息を吐くと仕方なさそうに口を開いた。

妖狐姫「…出発前はいつも以上にわらわを愛でるのじゃぞ」

男「はいはい」

妖狐姫もやっと折れてくれた。

男「早く戻らないと。シエンさんが待ってる」

てんこ「そうだな」


193 名前:SS速報Rがお送りします [saga] 投稿日:2017/05/02(火) 03:55:13.70 ID:BR6G/i8m0
………………………………

シエン「しらこ様…なんとかあちら側も要件を飲んでくださいました」

しらこ「でかした。礼を言うぞシエン」

しらこ(…楽しみだよ男殿)

しらこ(貴方を必ず…ボクのものにしてみせる…)




194 名前:SS速報Rがお送りします [saga] 投稿日:2017/05/02(火) 03:55:53.41 ID:BR6G/i8m0






しらこの野望








195 名前:SS速報Rがお送りします [saga] 投稿日:2017/05/02(火) 03:57:01.02 ID:BR6G/i8m0
なうろうでぃんぐ…

(-ω-)


196 名前:SS速報Rがお送りします [sage] 投稿日:2017/05/02(火) 08:15:50.19 ID:JurJxmX1o
ショタホモか…
期待


199 名前:SS速報Rがお送りします [sage] 投稿日:2017/05/02(火) 17:12:24.00 ID:KFGbt9U7O
ホモは勘弁だが男の娘は別腹。


200 名前:SS速報Rがお送りします [sage] 投稿日:2017/05/03(水) 08:28:26.67 ID:cHUqDXfoO
いやそれもホモだから


201 名前:SS速報Rがお送りします [sage] 投稿日:2017/05/03(水) 18:08:13.60 ID:Xh2fvJbKo
いや、しらこさまが男装美少女の可能性がワンチャン


202 名前:SS速報Rがお送りします [sage] 投稿日:2017/05/03(水) 19:08:31.03 ID:1JdePEtD0
こらこら文句を言うでないそなたら

楽しみにしておるぞ


203 名前: ◆hs5MwVGbLE [saga] 投稿日:2017/05/04(木) 00:46:40.54 ID:X2lDrYW00

男「妖狐姫…もうそろそろ出発の時間なんだけど…」

二日後の夕方、これでもかというくらい撫で回したつもりだったが、妖狐姫はまだ満足しないのか俺から抱きついて離れようとしない。

妖狐姫「…やじゃ」

適当に眠らせてその間に…とも思っていたのだが彼女は睡魔に抗い、目を半開きの状態で意地でも俺にすがりついてきた。


204 名前:SS速報Rがお送りします [saga] 投稿日:2017/05/04(木) 00:47:32.18 ID:X2lDrYW00
男「人力車が来るから外で待ってないと…な?」

妖狐姫「のぅ…やはり外泊なぞやめにせぬか?」

男「もうシエンさんには行くって言っちゃったんだ。そういうわけにもいかないよ」

妖狐姫「うぅ〜…」

くぅこ「車をくろこ殿に変えればまだ時間はあるでごじゃるよ」

男「それだけはぜってーやだ!」

もしくろこの車なんかに乗ったら俺はしらこの頭の上に吐瀉物をかぶせるだろう。


205 名前:SS速報Rがお送りします [saga] 投稿日:2017/05/04(木) 00:48:16.02 ID:X2lDrYW00
てんこ「姫様、私がいますよ」

妖狐姫「わっ…」

ひっつき虫と化した妖狐姫をてんこさんが後ろからそっと抱きかかえた。

てんこ「旦那様、旦那様が留守の間はこの私が姫様の座椅子となろう。だから旦那様は安心して己の使命に励んでくれ」

男「…はい!」

くぅこ「参るでごじゃるか」

男「行くか」


206 名前:SS速報Rがお送りします [saga] 投稿日:2017/05/04(木) 00:49:43.41 ID:X2lDrYW00
妖狐姫「…百倍じゃ」

男「んあ?」

妖狐姫「帰ってきたらいつもの百倍わらわを愛でるのじゃ〜!!!」

彼女はてんこさんの腕の中でバタバタと暴れながら叫んだ。

男「…分かったよ」

てんこ「だ、旦那様…そのときは私も…」

男「え?てんこさんも何か…」

てんこ「い、いや!やっぱりなんでもないっ!」


207 名前:SS速報Rがお送りします [saga] 投稿日:2017/05/04(木) 00:51:00.52 ID:X2lDrYW00
…………………………

くぅこ「屋敷が点になって行くでごじゃるよ〜…」

男「また二人っきりだな。くぅこ」

くぅこ「ふぇ!?二人きりだからといってよそ様の屋敷で…しょ、しょの…あのようなことは…」

男「あのようなことって?俺は何もいってないぞ〜?」

焦るくぅこの頭を撫でながら意地悪に煽る。


208 名前:SS速報Rがお送りします [saga] 投稿日:2017/05/04(木) 00:52:02.21 ID:X2lDrYW00
くぅこ「わふっ…」

沈む夕日と同じ色に染めた顔で俯く彼女の頬を意地悪につついた。

男「なんのことか知らないけど、くぅこがどうしてもって言うなら?出来る範囲のことはしてあげるよ」

男「家来に褒美を与えるのも主の務めだしな〜」

くぅこ「…なんでもないでごじゃるよ」

男「我慢するのは禁止だぞ?」

くぅこ「何も我慢してないでごじゃるぅ〜!」

くぅこは目をぎゅっと閉じたまま俺の胸をポカポカ叩いた。


209 名前:SS速報Rがお送りします [saga] 投稿日:2017/05/04(木) 00:53:17.30 ID:X2lDrYW00
男「まぁいいや。はいぎゅー」

おふざけ程度に彼女に抱きつく。

くぅこ「あぅ…我慢できてないのは主殿の方でごじゃるな…」

男「こんな可愛い家来が隣に座ってて我慢しろって方が無理でしょ」

くぅこ「むぅ…少しばかり調子に乗りすぎでごじゃる」

男「ごめん久しぶりに二人きりだから嬉しくてつい…駄目か?」

くぅこ「駄目と言ったらどうするつもりでごじゃるか?」

男「鬱だ死のう…」

くぅこがマジなら割とマジで


210 名前:SS速報Rがお送りします [saga] 投稿日:2017/05/04(木) 01:00:58.10 ID:X2lDrYW00
車屋「…兄ちゃん本当に姫様の婿さんなのかい?そっちの子は護衛役かと思ったら…なんでぃ、愛人さんかぃ」

くぅこ「な…あ、あいじん…?」

男「違うぜおっちゃん!愛人なんてそんな生ぬるいもんじゃないって!」

車屋「へぇへぇ…若いってのはいいねぇ…姫様も寛大なお方よな。うちの奥さんなら他の女の子にそんなことしてるのバレたら野菜包丁で切り刻まれちめぇよ」

車屋「ま、なんでもいいけどよ…いちゃつくのは降りてからにしておくれよ」

車を引っ張るガタイの良いおっさんは呆れ気味だった。

くぅこ「ほら怒られてしまったでごじゃる」

男「ちぇー…」



211 名前:SS速報Rがお送りします [saga] 投稿日:2017/05/04(木) 01:01:36.29 ID:X2lDrYW00
…………………………

次の日の朝。
俺たちは無事隣街に到着した。

車屋「ほい到着」

くぅこ「恩にきるでごじゃる。お代でごじゃるよ」

車屋「はいよ!確かに頂いたぜ」

車屋「つっても兄ちゃんの方は…」

男「ぐぅ…ぐぅ…」

くぅこ「すまぬでごじゃるよ。今起こすでごじゃる」

くぅこ「主殿ー!」


212 名前:SS速報Rがお送りします [saga] 投稿日:2017/05/04(木) 01:02:07.33 ID:X2lDrYW00
車屋「あ、嬢ちゃん」

くぅこ「ふぇ?」

車屋「ぶっちゃけ…その、兄ちゃんと嬢ちゃんの関係って…なんなんだい…?」

くぅこ「くく…ただの主従でごじゃるよ」

車屋「そーかい」


213 名前:SS速報Rがお送りします [saga] 投稿日:2017/05/04(木) 01:02:34.38 ID:X2lDrYW00
車屋(…某にはそうは見えんがな)

くぅこ「あーるーじーどーのー!」

男「んー…あと五分…むにゃー…」

車屋(さながら新婚夫婦といったところか)


214 名前:SS速報Rがお送りします [saga] 投稿日:2017/05/04(木) 01:03:35.60 ID:X2lDrYW00
………………………………

しらこ「男殿、よくきてくれたね」

シエン「あっしもお待ちしておりました」

男「久しぶりだな。しらこ様」

しらこの屋敷に上がるのは二度目だ。
前回散々俺を拒んだ門番が二つ返事で通してくれたのには何だか笑ってしまいそうになった。

今回はアンウェルカムではなくウェルカムというわけだ。


215 名前:SS速報Rがお送りします [saga] 投稿日:2017/05/04(木) 01:04:19.30 ID:X2lDrYW00
しらこ「もう『様』なんかいらないよ。貴方は特別だ」

男「お、おう」

男(まあわざわざ名指しで呼ばれるほどだから特別ってのは分かるけど…前との扱いの差でちと背中がむずがゆいな…)

しらこ「遠出で疲れたろう?ひとまず料理人にあなた方二人の朝飯も作らせておいたんだ。共に箸を取ろうじゃないか」

くぅこ「有難いでごじゃるな。お言葉に甘えてご一緒させていただくでごじゃるよ」

しらこ「くぅこ殿は食いっぷりがよいと聞いている。おかわりも遠慮しなくていいよ」

くぅこ「はにゃっ!?い、一体どこでそんなことを…」

くぅこが目尻で俺を睨む。

男「え…いや!俺は何も言ってないぞ!」


216 名前:SS速報Rがお送りします [saga] 投稿日:2017/05/04(木) 01:05:27.05 ID:X2lDrYW00
しらこ「いやぁ、実はくぅこ殿に詳しい人物から貴方のことをいろいろ聞いてね」

くぅこ「む…」

シエン「…しらこ様、あまり喋りすぎると変な誤解と警戒を招きますぞ」

しらこ「いや失礼失礼…安心してくれ。ボクは今回本当に男殿に癒して頂きたいだけなんだ。別にもうあなた方に対して恨みなんてものもないし殺伐とした考えもないよ」

男「だってさ。くぅこ、ここは信じてやろうぜ。あまり協力的じゃないと貰えるもんも貰えなくなっちまうぞ」

くぅこ「…主殿がそう言うなら」


217 名前:SS速報Rがお送りします [saga] 投稿日:2017/05/04(木) 01:06:18.40 ID:X2lDrYW00
少し耳の毛を逆立てたくぅこをおさめると丁度使用人の方々だと思われる女の人たちが朝食を乗せたお盆を部屋に運んできた。

しらこ「きたぞ。ボクはこの素晴らしき香りを鼻に入れるとどれだけ寝不足でも目が覚めてしまうんだ」

男(確かに…すっげぇ美味そうな匂いがする)

あの屋敷の料理に負けずとも劣らない…かいでるだけで腹つづみが打てそうだ。

そんな料理を乗せたお盆はとうとう俺の目の前に置かれた。

やはりここでもメインは油揚げなのか、一番最初に目に入ったのは大盛りのご飯の上に盛られた油揚げの卵とじだった。

男(これは、きつね丼か)


218 名前:SS速報Rがお送りします [saga] 投稿日:2017/05/04(木) 01:06:57.19 ID:X2lDrYW00
盆を囲むみなで合掌した後俺はそのどんぶりを手に取った。

そして箸を米に近づけ…

くぅこ「主殿、そのどんぶりを渡して欲しいでごじゃるよ」

ようとしたところを隣にいたくぅこに止められた。

男「どうした?…まさかここでもあーんして欲しいとか…」

くぅこ「…せっしゃのどんぶりと交換するだけでごじゃるよ」

俺の渾身のボケも虚しく、くぅこは真顔でそれをあしらうと俺のどんぶりと自らのどんぶりを取り替えた。


219 名前:SS速報Rがお送りします [saga] 投稿日:2017/05/04(木) 01:07:42.25 ID:X2lDrYW00
くぅこ「いいでごじゃるか?せっしゃがこれを口にしてなんとも無かったら主殿も食べ始めるでごじゃるよ」

男(なるほど毒味というわけだな)

さすがくぅこ用心深い。

くぅこは箸で一口分取ると口の中にそれを入れた。

そしてゆっくりとそれを噛む。

男「…どうだ?大丈夫そうか?」

くぅこ「っ!!!!」

突如くぅこが大きく目を見開いた。


220 名前:SS速報Rがお送りします [saga] 投稿日:2017/05/04(木) 01:08:20.71 ID:X2lDrYW00
男「くぅこ!?」

男(なっ…まさか本当に毒が…)

五秒ほど瞬き一つせず固まったくぅこだったが、その後彼女はいきなり電源が入った機械のようにどんぶりを勢いよくかきこみだした。

くぅこ「はむっ!はむっ!はふっ!」

男(え………?)

そしてあっという間にきつね丼を平らげるとお盆にどんぶりをドンと置き、さっきまでの俺にやっと聞こえるか程度の小声とは真逆の大声で言った。

くぅこ「主殿!早く食べるでごじゃるよ!!」


221 名前:SS速報Rがお送りします [saga] 投稿日:2017/05/04(木) 01:08:52.32 ID:X2lDrYW00
男「は…?いや…さっきくぅこが待てって言ったんじゃ…」

くぅこ「何をしているでごじゃるか!?冷めてしまうでごじゃるよ!このまま冷めてしまうならせっしゃが…」

男「あー分かった分かったから」

俺のどんぶりに向かって伸びた彼女の手をはらうと俺は再びどんぶりを手に取り今度こそ最初の一口を味わった。


222 名前:SS速報Rがお送りします [saga] 投稿日:2017/05/04(木) 01:09:57.05 ID:X2lDrYW00
男「ぬぅ…!?」

たかが油揚げの卵とじ…
されどあなどることなかれ…

世に美味い卵かけご飯が存在した。
世に美味いいなり寿司が存在した。

ならばだ、それらの美味い二つの食べものが合わさったかのようなこの食べ物…

美味くないわけがないのである。

気がつけば俺は箸で米をかき込んでいた。
美味たるダシを吸った油揚げを奥歯でかみしめていた。


223 名前:SS速報Rがお送りします [saga] 投稿日:2017/05/04(木) 01:10:26.63 ID:X2lDrYW00
突然のあつあつご飯の波にに口の中は熱くも幸せの悲鳴をあげた。

喉が詰まった。
それでも箸はこの美味を求めて動き続けた。

死にかけた。

だがほんの一瞬、ほんの一瞬だが思ってしまった。


男(この味を舌に止めたまま死ねるなら…いっか…)



………………

…………

……


224 名前:SS速報Rがお送りします [saga] 投稿日:2017/05/04(木) 01:11:07.90 ID:X2lDrYW00

男「…んぷはっ!!!!」

男「はぁ…はぁ…はぁ…」

空っぽになった湯飲みをお盆に置いて息を整える。

男(あぶねー…毒なんてなさ過ぎて逆にもう少しで美味すぎる毒に殺されるところだった…)

しらこ「はは…男殿、そんなに急がなくてもきつね丼は逃げたりしないよ」

シエン「はっはっ!主従そろって豪快でございますなぁ!」


225 名前:SS速報Rがお送りします [saga] 投稿日:2017/05/04(木) 01:11:54.42 ID:X2lDrYW00
男「ああ…」

くぅこ「あ、主殿ぉ…」

俺は死にかけた故に落ち着きを取り戻したがどうやら彼女はまだ口の中の天国から戻ってこれていないようだ。

くぅこ「あ、あの店で食べていたきつねうどんはなんだったでごじゃるか…?あれは本当にうどんだったでごじゃるか…?」

くぅこ「いや、もしやその逆。この美味たる小麦粉はうどんではないもっと別の食べものでごじゃるか…?」

男「お、落ち着けくぅこ!俺たちが食べてたのもうどんだしそれもうどんだ!」


226 名前:SS速報Rがお送りします [saga] 投稿日:2017/05/04(木) 01:12:44.52 ID:X2lDrYW00
しらこ「食後には団子も用意してあるよ」

くぅこ「団子!」

しらこ「もし気に入ってもらえたなら明日の朝はもっと多めに作らせるとするよ」

くぅこ「真でごじゃるか!?」

しらこ「嘘なんてついてこちらに得なんてないじゃないか。丁重におもてなしさせてもらうよ。あなた方はお客様なんだからね」

しらこ「どうだい男殿?ここのご飯は魅力的だろう?こっちに来ればいつだってこれが食べられるよ?」

男「あはは…じょーだん」

しらこ「…つれないなぁ。こっちは冗談じゃないんだけど」

男「生憎あっちの飯も翼が生えそうなほど美味くてね」

男「あと…」

くぅこ「もぐもぐ……にゅ?」

男「いいもんが見られるもんで」

しらこ「ふーん…。そうなんだ」


227 名前:SS速報Rがお送りします [saga] 投稿日:2017/05/04(木) 01:14:38.21 ID:X2lDrYW00
なうろうでぃんぐ…

(-ω-)



229 名前:SS速報Rがお送りします [sage] 投稿日:2017/05/04(木) 12:54:19.42 ID:WRONO64bo
てんこさんはちょっとグラマラスなお姉さんなイメージ


230 名前:SS速報Rがお送りします [sage] 投稿日:2017/05/04(木) 16:02:29.40 ID:AXI9WlHao
おつ
朝から衣笠丼っていいよな


232 名前:SS速報Rがお送りします [sage] 投稿日:2017/06/07(水) 06:33:05.23 ID:sGhpDxuWO
前作から一気に読んで追いついた
どいつもこいつも可愛過ぎるだろ
続き期待してる



次へ 戻る 上へ